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憂国のザーメン

 好調な内閣支持率とは裏腹に、内閣総理大臣、大泉龍一郎は日本の将来を憂えていた。構造改革は一向に進まない。貿易黒字は減少傾向にある。少子高齢化問題。財政赤字。何れを取っても頭の痛い問題ばかりであった。
 とりわけ憂えるべき問題なのは貿易黒字の減少と景気後退、失業率の増大であった。
 ......早急に何らかの手を打たなければ手遅れになる。
 首相はロマンスグレーの髪をかきあげると、以前より温めていた腹案を実行に移すべく行動した。
「やるっきゃない」
 選挙のときの大泉のスローガンである。広告代理店に考えさせたこのコピーにより大泉は前回の解散総選挙で地滑り的勝利をおさめた。 ドアをノックする音がした。
 約束の時間ちょうどだった。かねてより計画を打ち明けておいたドクター則松がやってきたのだ。
「まいど! 」
 漫才師のような衣装に身を包んだドクターは足にローラースケートのようなものを履いて部屋に入ってきた。足にはめたものはローラースケートのようであるが、それはウサギのようにピョンピョンと飛び跳ねる機械だった。
 このドクターは世間では奇人で通っているが、フロッピーディスクのフタの発明や灯油ポンプの色を赤と白に決めたことで知られる世界的な発明家だった。
「ご注文の品ができあがりました」
「そうか、ご苦労だった」
 大泉はニヒルなポーカーフェイスを崩さないように務めながら応えた。
「しかし、それにしても総理。突飛な計画ですな」
「何が突飛なものか。この国難を乗り切るには、このくらいの発想の転換と飛躍が必要なのだ!    」
 大泉は珍しく激昂した物言いをした。
「いや、失礼。遠大で勇壮な計画と申し上げるべきか......」
 ドクターが総理から極秘で、この計画を打ち明けられたのは二ヶ月前のことだった。

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